現代版養生訓

2012年の現代版養生訓

1月

地域医療部 医療福祉係 医療ソーシャルワーカー 吉田 政利

医療ソーシャルワーカーにご相談ください

病気や怪我で、その治療や治療後の生活について様々な不安を感じた事はないでしょうか?
通院や入院で生じた医療費の心配、家族の悩み、患者会や家族会について知りたい、病気についての心配、退院後の療養生活について心配、介護保険制度や福祉制度について知りたい等の心配事がありましたら、病院の医療ソーシャルワーカーにご相談ください。
医療ソーシャルワーカーは、聞きなれない職種かもしれません。社会福祉の立場から、患者さんやご家族の抱える心理的・社会的な問題の解決や調整を援助し、社会復帰のお手伝いをさせていいただく専門職です。
院内の職員との連携はもちろんですが、他の医療機関や公的機関等とも連携し、少しでも患者さんが不安なく医療が受けられるようにサポートさせていただくのが医療ソーシャルワーカーの主な仕事です。
また、疾患や治療の内容によっては、退院後に今までと同様に生活することが難しくなってしまう場合もあり、退院後には介護保険制度を利用して生活をしたい、以前から介護保険サービス利用されていた方はサービスの見直しをして欲しいと感じる方もいらっしゃるかと思います。
そういった時には、ご本人やご家族と相談し、介護支援専門員、訪問看護、訪問リハビリや訪問介護、福祉用具業者等の介護保険事業者と病院職員が連携し、患者さんが退院後に不安なく過ごすことのできるように話し合いの場を設けるというようなことも行っています。
公的制度の利用に関しては、細かな決まりがあったり、利用できるようになるまで時間のかかる制度もありますので、不安に感じる事があれば早めにご相談ください。
医療機関によって相談窓口の名称が違っていたり、相談できる時間帯が異なりますので、詳しくは、おかかりになっている医療機関でご確認ください。

2月

市立病院 在宅介護支援センター 宮澤 真弓

小児の麻酔

介護保険は平成12年4月から施行されました。
いつまでも元気で長生きしたい。でも自分や家族に介護が必要になった時どうすればいいのだろう。そんな皆さんの共通の不安である「介護」を社会全体で支える仕組みが介護保険制度です。
介護保険は65歳以上の人(第1号被保険者)で、寝たきりや認知症などで、入浴・排泄・食事などの日常の生活動作について、常に介護が必要な人や家事や身支度などの日常生活に支援が必要な人が申請できます。
また、40歳以上65歳未満の人(第2号被保険者)で、初老期認知症、脳血管障害など老化に伴う特定疾病により介護や支援が必要になった人も申請することができます。
介護支援専門員(ケアマネジャー)は、介護保険法において要支援・要介護認定を受けた人(利用者)やその家族からの相談を受け、利用者の心身の状況に応じた適切な介護サービスが利用できるように調整を行ないます。
利用者、家族の生活に合わせた要望を明らかにすることで、生活の質を高め、その人がその人らしく豊な老後を過ごす事が出来るように一緒に支援させていただいています。
そのためにはどのように生活したいかの目標を一緒に考え、居宅サービス計画(ケアプラン)を作成し、評価を行ない、他のサービス事業者との連絡、調整などを取りまとめる業務などをしています。利用者が住み慣れた自宅で自立して、その人らしく生活していただくことが重要です。
飯田市立病院在宅介護支援センターは、病院併設型の居宅介護支援事業所で、医療依存度の高い方や緩和ケア等を必要とされている方を担当しています。
いつでも気軽にご相談ください。

3月

訪問看護ステーション訪問看護師 平沢 まゆみ

訪問看護って知っていますか

訪問看護は、病気や障害を持った人が住み慣れた地域やご家庭で、その人らしく療養生活を送れるように、訪問看護師等が生活の場へ訪問し療養生活を支援するサービスです。
かかりつけ医が「訪問看護が必要」と認めた全ての方が対象です。介護保険・医療保険の該当者が利用出来ます。赤ちゃんからお年寄りまでが利用でき、かかりつけ医からの「訪問看護指示書」が必要になります。
訪問看護の内容は、病状の観察・身体の清潔や排泄の介助など療養上のお世話・医師の指示による医療処置・床ずれ予防などです。また、ご家族等への介護支援・療養相談など看護の専門職として適切な判断に基づいたケアとアドバイスを致します。医師や介護支援専門員(ケアマネジャー)・各サービスの事業者と連携しながら、利用者・ご家族が安心して豊かな療養生活を送れるよう支援や調整を致します。
看護師が必要なサービスを提供するためには、費用がかかります。介護保険の場合、利用者の負担は利用料の1割です。「要支援1~2」または「要介護1~5」に該当した方は、介護支援専門員に相談し居宅サービス計画に訪問看護を組み入れてもらう必要があります。医療保険では、利用者の負担は、保険証の一部負担金の割合になります。
飯田市には、6ヶ所の訪問看護ステーションがあります。訪問看護の利用については、かかりつけ医や各病院の相談窓口兼退院支援担当者(医療ソーシャルワーカー・看護師)・包括支援センター・介護保険を利用している方は担当介護支援専門員などにご相談ください。

4月

リハビリテーション科 理学療法士 田中 伸次

訪問リハビリテーションについて

訪問リハビリテーションは、通院・通所をしてリハビリを受けることが困難な方に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などが自宅に訪問して行います。
利用者の状況に応じた練習や運動などのリハビリテーションを住み慣れた環境の中で行うことにより、自宅での生活をより良く送ってもらうための支援サービスです。
病院で行うリハビリテーションに対し、本人の実際の生活に即したリハビリテーションの内容を実際の生活の場面で提供できることが大きな特徴になります。
また、本人の家族などに対し、生活している現場にて相談や助言も行います。
さらにベッドや歩行器などの福祉用具の導入、手すりなどの住宅改造についても、福祉用具の専門業者と連絡を取り合いながら本人の動作能力や介護状況などを考慮して相談に乗ります。
最近では退院直後の支援も積極的に実施しています。病院から退院するにあたり十分な退院支援を受けてきていても、自宅に実際に帰ると入院していた時ほど動けなくなってしまう事をたびたび見かけます。
一旦動作能力が低下してしまうとあとから回復するには大変時間がかかってしまいます。退院時から自宅での生活が安定するまでリハビリテーションを継続し、病院で高めた動作能力をそのまま自宅で生かせるような支援を実施しています。
自宅で要介護状態にある方が以前より動きにくくなり、トイレなどの動作が行いにくいことを感じたら、お近くのかかりつけ医や介護支援専門員(ケアマネージャー)に訪問リハビリテーションの利用についてご相談ください。

5月

リハビリテーション科 臨床心理士 井出あや

医療機関における臨床心理士の役割

臨床心理士とは、心理学の知識や知恵、技法を用いて、人間の心にアプローチする「心の専門職」です。活動の領域は、教育、医療、福祉、司法、産業など多岐に渡ります。医療の現場では、精神科・心療内科で心の病を抱えた方への支援を行う心理士が多いのですが、最近ではこれらの科にとどまらず、他の科にも活動の場が広がってきています。
当院でも2010年4月に臨床心理士が採用となり、現在は2名体制で業務にあたっています。現在の主な業務は小児の発達検査や性格検査といった心理検査の実施や小児のカウンセリング、がんなど病気に伴う心の辛さを抱えた方へのカウンセリング(緩和ケア)を中心に行っています。
全国的にも緩和ケアに携わる臨床心理士の数は増加傾向にあります。当院でも、緩和ケアチームの一員として主に入院中の方にカウンセリングを行っています。患者さんだけでなく、ご家族のお話も聴くこともあります。がんが疑われた時、告知後、治療中など、患者さんもそのご家族も様々な不安や動揺を経験します。病気の事、心配事をなかなか周りに話すことができず、一人で抱えて辛い思いをされている方も多くいます。家族同士でもお互いのことを思うがゆえに話しにくい場合もあります。さまざまな不安や心配事の内容は人それぞれですので、臨床心理士は、ゆっくりと時間をかけ、お話をうかがい、その人らしい心持ちで過ごせるよう患者さんやご家族の心理的な支援を行います。
話をすることで気持ちが軽くなったりした経験はありませんか?お一人で悩まず、ご相談ください。

6月

放射線診断科 医師 岡庭優子

PET検査について

PETとはポジトロン断層撮影のことで、陽電子(ポジトロン)を放出する薬剤を体内に注射し、その薬剤が体内のいろいろなところに集まる様子を撮影するものです。PET─CTはPETとCTの撮影を同時に行うことで、より診断能を高めた装置です。 
PET検査は使用する薬剤により脳や心臓など、身体のさまざまな場所の検査が可能になります。その中でも18F─FDGという薬剤は、がん細胞が正常細胞よりも盛んに分裂し、グルコース(糖分)をたくさん消費する性質を利用してがんの診断を行うものです。臨床研究によりその有効性が証明され、保険診療にも適用(早期胃がんを除く)になりました。本院でもがんの診断での使用を第一に考えています。放射線を使用する検査ですので被検者への被曝がありますが、1回の検査の被爆量は人が地球上で暮らしていて1年間に自然放射線のために被曝する量と同程度といわれます。
18F─FDGのPET検査は肺がん、大腸がん、食道がん、膵がんなどの消化器がんや、子宮頚がん、卵巣がんなどの婦人科系がん、甲状腺がん、乳がん、悪性リンパ腫、骨腫瘍、悪性黒色腫(メラノーマ)などの診断や、転移を見つけるのに大変に有効です。
しかし、残念ながらすべてのがんで有効というわけではありません。18F─FDGは、腎臓を経て尿中に排泄されるため、腎臓や膀胱のがんは検出困難です。また、肝臓がん、胃がん、前立腺がんは超音波検査や内視鏡のほうがPET検査よりも有効といわれます。がんの早期発見に大変に有効であるといわれますが苦手な臓器もありますので他の検査(超音波や血液検査、CT、内視鏡など)と組み合わせて行ってまいります。

7月

乳腺内分泌外科 医師 新宮 聖士

乳がん検診について

【はじめに】
日本では年間約5千人の女性が乳がんに罹患し、女性における悪性腫瘍の罹患率では第1位になりました。日本人女性が一生の間に乳がんにかかる確率は16人に1人であり、今後さらに増加していくと予想されています。
【乳がんの発見・検診】
日本人の乳がんは30歳代から増え40歳代でピークとなりますが、それ以降も発症率が急に低下することはありません。いくつになっても乳がんはできます。乳がんは自分で発見できるがんであり、患者さんの多くは自分でしこりに気づき来院されます。自己検診のしかたについては、各病院にパンフレットがありますので参考にされるといいでしょう。乳がん検診ですが、以前は視触診のみの検診が主でした。しかし、視触診だけでは乳がんの死亡率を改善できないことがわかり、2004年度以降厚生労働省の通達により、40歳以上に対してはマンモグラフィ併用による検診が推奨されています。超音波(エコー)検診は乳がん死亡率を減少させるという十分な根拠がないため、検診としてはまだ確立していませんが、乳腺組織が密な若い女性の乳房では、マンモグラフィよりエコーの方が異常を発見しやすいこともあります。検診で異常を指摘された場合は、直ちに精密検査医療機関を受診してください。一般にマンモグラフィ検診で要精密検査とされた方の2~3%に乳がんが発見されています。ここ数年の当院の経験では、このような検診発見乳がんは早期乳がんの比率が高く(病期0~Ⅰ:60%以上)、約90%に乳房温存手術が可能でした。
【おわりに】
40歳以上女性の日本の乳がん検診受診率は24・3%(2010年)で、欧米(70~80%)と比較すると極端に低いのが現状です。乳がん早期発見のため、40歳になったら2年に1回マンモグラフィ検診を受けることをお勧めします。

8月

市立病院 小児科 長沼邦明 医師

赤ちゃんが夜中に熱をだしたらどうしますか?

赤ちゃんが夜中に熱をだしたらどうしますか。すぐに病院へ連れて行こうと思いますか。必ずしも病院にすぐにかかる必要はありません。あたふたと赤ちゃんを夜中に連れ出して病院に行くのは、むしろ負担になるでしょう。
まず赤ちゃんの様子を観察しながら、5分程度かけて体温を測り直してください。その間に、あやしてみて、ニコニコすればまったく心配ありません。ニコニコまではしなくても顔色がピンクで哺乳力が大体いつもと同じ位ならほとんど大丈夫です。
測り直した熱が38℃以下なら特に病気でなく温め過ぎのこともあります。39℃以上の熱がでて、いつもより少し機嫌が悪いようなら、熱を下げる手立てをしてみてもよいと思います。寒がっている様子がなければ、まず衣服を脱がせて、おむつと肌着一枚にしてください。それからぬるま湯で絞ったタオルで、頭や顔、頸、胸、手足、腕、脚、背中などを拭いてください。これを30分も続ければ、熱は少し下がり機嫌がよくなると思います。ここで母乳や人工ミルク、市販の経口補液用飲料水などを少しずつ与えてください。
でも、次のような時は夜中でも医療機関を受診してください。①生後3ヶ月未満である、② 泣き声が弱々しい、③顔色が青い、④繰り返し吐いている。
尚、出生届を役所(飯田下伊那で)に出した時、「こどもの急病/診察が必要なのはどんな時?」と題した冊子を渡されたと思います。これには、こどもの急病時の医療機関への上手なかかり方が、分かり易く書いてありますので、参考にしてください。また、できるだけ早くかかりつけ医療機関を決めて、予防接種をきちんとやっておくのも大切です。特にHibワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンがやってあれば、熱が出た時一番心配な細菌性髄膜炎はほとんど防げます。
夜間困ったら、休日夜間テレフォンセンター(0265-23-3636)か#8000に相談してみても結構です。

9月

市立病院 糖尿病看護認定看護師・日本糖尿病療養指導士 竹村春美 看護師

尿病といわれたら

近年、糖尿病は増加の一途をたどっており、40歳以上の糖尿病もしくは予備軍とされる患者さんは3人に1人との報告があります。また、現在糖尿病を強く疑われた人が治療をする割合は55%であり、残り45%の方は治療を受けていない、もしくは治療を中断しているとの報告もあります。糖尿病は自覚症状が現れにくく、進行が緩慢で自分の体の中で起きている影響を捉えにくい特徴が受診を遅らせる原因となっています。
また、血糖コントロール不良の状態が続くことにより確実に病気を悪化させてしまう進行性の病気でもあります。会社や地域の検診で糖尿病を指摘された時には、自覚症状がなくても早めの受診をしてください。
さて、糖尿病の治療についてです。糖尿病の治療の基本は「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3本柱となります。
食事や運動は生活に密接な内容となります。その為、日常生活の中で患者さん自身が気を付けなければならない事も多い病気です。人それぞれ生活習慣も違いますし、食事の好みも違います。運動ができない環境である事も多々あります。そんな中で治療を続けていかなければなりません。
病気を上手にコントロールして治療が続けられる事もありますが、そのような良い状態ばかりではないかもしれません。多忙な仕事や付き合い、家事や介護、他の病気の治療によってコントロールがうまくいかない場合もあると思います。
それは生活の中で治療を続ける限り仕方のない事でもあります。そういった時こそ私たち医療者が患者さんと共に考え、生活と病気との折り合いをつけ、その人らしい生活が送れるように支援します。
是非お気軽にご相談ください。

10月

市立病院副院長 脳神経内科 羽生 嗣直 医師

「ピンピンコロリ」の夢

「ピンピンコロリ」という言葉をご存じですか?
元気に長生きして、ある日誰の世話にもならずにコロリと逝くという、一つの理想とされる生き方です。
しかし、ピンピンコロリで逝ける方は少ないのです。長い間闘病されたり、認知症などで療養されたりした上で亡くなる方も多いのです。どのような状態になろうとも、自分の人生は自分だけのものであり、自分らしい「いい最期」を迎えたいものです。
今回は、この養生訓のテーマとしては好ましくないかもしれませんが、人生の幕引きに向き合ってみたいと思います。
体調を崩されて病院に来られた方に対して、私たち医師は、きちんと診断して治療し、自宅へ戻っていただけるよう努めています。しかし、不幸にして治療が難しく命が危ないと判断された場合、どこまで集中的な治療をすべきか迷うことがあります。家族の方が「できるだけのことをしてほしい」と望まれれば、何とかお応えしようと努めます。しかし、ご本人にとって本当によいことかと考えてしまうこともあります。
そこで一つ提案させていただきます。お元気な時から、また気持ちも落ち着いている時に、自分らしい「いい最期」について考えてみてください。家族の方とも話してみてください。そしてかかりつけ医の先生に相談してみてください。
こんな「やぶから棒」の話は、多くの方々からお叱りを受けることは重々承知しています。また、最近は国の施策で自宅での看取りをすすめる動きがありますが、社会的な風潮にとらわれず、自分だけのものを考えてみてください。
私は、家族や親しい人々に感謝とお別れの言葉を伝えながら、自宅で穏やかに逝きたいと思っています。現実はまだ難しいかもしれませんが、皆さんのご意見をいただきながら、それぞれの方が自分の希望に沿った最期が迎えられる環境を作っていければと思います。
それまではやっぱり理想は「ピンピンコロリ」かな、と夢のようなことを考えています。

11月

市立病院 泌尿器科 三村 裕次 医師/

過活動膀胱

トイレが近い、尿がもれてしまうといったことでお困りではありませんか。
それは過活動膀胱のせいかもしれません。過活動膀胱とは、すぐに尿がしたくなる(頻尿)、尿がしたくなると我慢が難しい(尿意切迫感)、尿意をもよおすと、もらしてしまう(切迫性尿失禁)といった症状をきたす病状のことをいいます。40歳以上の日本人の実に8人に1人が症状を経験しているとされており、比較的若い年代で悩まれている方も少なくありません。
原因疾患としては、脳血管障害やパーキンソン病のような脳神経疾患、男性の場合は前立腺肥大症が多く、女性の場合は膀胱・子宮・尿道を支える骨盤底筋が弱まることが原因となることもあります。病院では尿検査、超音波検査などで重要な疾患がないか検査をします。つらい検査ではありませんのでご安心下さい。膀胱や前立腺のがんが潜んでいることもあるので注意が必要ですが、特に疾患がなく、冷えや寒冷などが原因のことも多いようです。
治療は原因疾患にもよりますが、多くの事例で内服治療が有効です。従来の抗コリン薬は膀胱が勝手に縮むのを抑える薬で、口が渇く、便秘になるなどの副作用が多少ありましたが、こういった副作用が少ない新薬も開発されています。トイレに行くのを少しずつ我慢することで膀胱にためられる量を増やす膀胱訓練や、尿道を締める力を鍛えることでもれを減らす骨盤底筋体操といった普段の生活の中でできる治療が有効なこともあります。
z過活動膀胱でお困りの方はぜひ泌尿器科でご相談ください。トイレで困らない生活を目指しましょう!

12月

市立病院 小児科 萩元緑朗 医師

RSウイルス感染症について

RSウイルスは、寒い季節に流行するかぜウイルスの一種です。同時期に流行するインフルエンザに比べるとあまり知られていませんが、実はとても身近で赤ちゃんの健康をおびやかすウイルスなのです。
RSウイルスは冬から春先にかけて流行しますが、今シーズンは例年にないペースで流行が進んでいます。感染力が非常に強く、生後1歳までに約70%が、2歳までにほぼ100%の乳幼児が一度はかかると言われています。一度かかっても免疫が充分できないため何度もかかりますが、徐々に免疫ができ学童や成人ではかぜ程度のことが多いです。
RSウイルスに初めてかかると、4~5日の潜伏期間を経て鼻水から始まり、その後発熱と咳が続きます。多くの場合は1~2週間で治りますが、約30~40%は喘息のようにゼーゼーする呼吸が特徴の細気管支炎や肺炎を起こすことがあり、さらに1~3%は呼吸困難などのため入院を要します(当院でも毎年約30~40人の入院があります)。生後1年以内、特に6か月以内は最も重症化しやすいため、この月齢の赤ちゃんにいかに感染させないようにするかが、感染予防の重要なポイントです。家族全員で協力してマスクの使用や手洗い、うがいなどに努め、家庭内にRSウイルスを持ち込まないようにしましょう。
RSウイルスに感染した際は残念ながら特効薬はありません。多くの場合は対症療法が中心で、水分補給、栄養、睡眠、保温、加湿などに心がけ安静にして経過をみることになります。咳がひどく、ゼーゼーして呼吸困難が強い、高熱でぐったりしていて水分が摂れないなどの症状がある場合は入院が必要になることがありますので、医療機関を早めに受診してください。