現代版養生訓

2013年の現代版養生訓

1月

市立病院 皮膚科 堀米玲子 医師

悪いシミの話

鏡を見てびっくり。「いつの間にかほっぺたにシミが・・」こんな経験ありますか。
顔にできるシミの中には、放っておいてはいけない「悪いシミ」があります。今回は「日光角化症」という名前の悪いシミの話です。このシミは「皮膚がんのはじまり」なのです。治療しないで放っておくと進行したがんに移行することがあります。日光角化症は長時間日光(紫外線)を浴び続けた皮膚にできます。
顔にできることが多いですが、頭部や耳、手の甲などにも生じます。患者さんの数は年々増加傾向で、特に70歳以上の方に多くみられます。日焼けで赤くなってもあまり黒くならない色白の人の方ができやすいようです。
日光角化症と、放置しても心配のないふつうのシミにはいくつか症状の異なる点があります。ふつうのシミは黒~茶色の均一な色調で周りの皮膚との境界は明瞭、表面もつるっとしています。日光角化症は紅味を帯びていることが多く、形は不規則で周りの皮膚との境界が分かりにくいことがしばしばです。また表面がざらざらしていて黄色っぽいかさぶたがついていたり皮がむけていたりします。触ってみると周りの皮膚よりも硬い感じがあります。このようなシミがあるときは皮膚科で診察をうけることをおすすめします。
確実な診断のためにダーモスコープという拡大鏡でシミの表面を詳しく観察したり、病変の一部を切除して組織検査をすることもあります。治療は、早期の病変であれば塗り薬を1~2カ月つけてなおすことができます。
自覚症状はないことが多いので顔をよく見ないと見過ごしてしまうこともあります。高齢の方の場合、おかしなシミがないかご家族が皮膚を見てあげることも大切です。

2月

市立病院 産婦人科 山崎輝行 医師

常位胎盤早期剥離

常位胎盤早期剥離とは、妊娠中まだ胎児が子宮の中にいる間に正常な位置にある胎盤が子宮の壁から剥がれることをいいます。胎児は胎盤を介して母体から酸素や栄養を受けているため、胎盤が先に剥がれてしまうと酸素が不足し、脳性麻痺などの障害が残ることや死亡することがあります。また、母体が重篤な状態になることもあります。そのため、常位胎盤早期剥離の発症後は大至急の対応が必要です。
常位胎盤早期剥離の代表的な症状は、急な腹痛、持続的なお腹の張り、多めの性器出血などです。判断に困るときは、我慢せずに分娩機関に相談しましょう。妊娠高血圧症候群、常位胎盤早期剥離の既往、切迫早産、交通事故などの腹部の外傷、喫煙などの危険因子に該当する場合、常位胎盤早期剥離を発症しやすくなります。これらの危険因子に該当しない場合でも常位胎盤早期剥離を突然発症することもありますので注意してください。
臨床症状から常位胎盤早期剥離を疑った場合、腹部超音波検査、胎児心拍モニター、血液検査などを行います。これらの検査で常位胎盤早期剥離と診断された場合は、できるだけ早急に分娩を終了させる必要があり、胎児の生存が確認された場合、経腟分娩の直前でなければ緊急帝王切開を行います。胎児が死亡した場合でも、時間の経過により母体のDIC(血が止まらなくなる状態)が進行するので、すみやかな経腟分娩(それが期待できなければ帝王切開)を行います。それと同時にDICに対する予防あるいは治療を行います。
妊婦健診をきっかけに妊娠高血圧症候群などの常位胎盤早期剥離の危険因子がみつかることもあります。特に気にかかることがなくても、適切な時期や間隔で妊婦健診を受けましょう。

3月

市立病院 外科 金子源吾 院長

急性腹症

急性腹症とは突然の激しい腹痛を主症状とし、早急に診断・治療(多くは緊急手術)を必要とする腹部の急性疾患の総称です。もともとは開腹手術により病名が特定されるまでの便宜的な呼称です。最近では画像診断などの進歩により、以前に比べると早期に確定診断されるようになったため、あまり使われなくなってきました。しかし、時にはショック状態となり、確定診断の前に緊急手術をしなければならないこともあり重要な疾患概念でもあります。
急性腹症の多くは急性胃腸炎、急性虫垂炎および胆石・胆嚢炎などの胆道疾患といわれていますが原因となる疾患は消化器疾患とは限らず、婦人科疾患や泌尿器科疾患などほかにもたくさんあります。
ここでは、緊急手術を要する主な疾患について述べますと、1)腹腔内出血を呈するもの:腹部大動脈瘤破裂、子宮外妊娠破裂、肝がん破裂など。2)消化管穿孔(せんこう=穴があくこと)による腹膜炎:胃・十二指腸潰瘍穿孔、胃がん穿孔、小腸・大腸穿孔など。3)血行障害による消化管壊死:絞扼(こうやく=しめられること)性腸閉そく、腸間膜血管閉塞、ヘルニア嵌頓、腸重積、腸ねん転など。4)炎症(腹膜炎併発):急性虫垂炎、急性胆管炎・胆嚢炎、急性膵炎、憩室炎などがあります。 
聞いたこともないような病気もあるかもしれませんがそれぞれ腹痛の起こり方、部位、程度、持続時間、随伴症状(熱、下痢、排ガス停止、排尿異常、月経歴など)および食事との関係などから原因が推測できることもあります。また、手術歴、不整脈、抗凝固薬内服の有無、妊娠歴なども参考になります。
急性腹症の中には日頃の養生で予防できるものも少なくありません。 

4月

市立病院 耳鼻咽喉科 塚本耕二 医師

花粉症について

今や国民病とまで言われる花粉症ですが、原因となる花粉は様々です。
圧倒的に多いのはスギ花粉症ですが、飯田下伊那地区はヒノキ花粉症も非常に多い印象です。その他にも5~8月頃のイネ科(カモガヤなど)、8~10月頃のキク科(ブタクサ、ヨモギなど)の花粉症などがあります。
花粉症の治療として最善なものは花粉症の原因となっている花粉に接触しないことです。現実的には自分の身の回りの花粉をなるべく減らすことを心がけましょう。
方法としては、外出時にはマスクや眼鏡を使用する。花粉が付きにくいスベスベした生地の服を着る。帰宅時には玄関先で服を軽くはたく(静電気が起こりにくい程度に)。洗顔、うがい、手洗いをする。家では、窓はなるべく開け放さない、カーテンをしたまま換気する、洗濯物はなるべく部屋干しにする。床は拭き掃除をして、カーペットや布団などは掃除機をかける。
これらを行って頂くと花粉症の症状が軽減されやすくなると思います。
自分でできるだけ予防を心がけて頂いた上で、鼻水、鼻閉、くしゃみ、目のかゆみ、のどのかゆみなどが出るようでしたら、近くの耳鼻咽喉科などを受診して頂くと良いと思います。
通常は抗ヒスタミン薬の内服、副腎皮質ホルモンの点鼻、抗アレルギー点眼薬などを使用して治療を行います。長期作用型の副腎皮質ホルモンの注射を行うこともありますが、副作用が出た時の対処が難しいために、我々は推奨していません。
新しい治療法としては、現在は保険適応外の舌下免疫療法があります。今までも注射による免疫療法はあったのですが、舌下のため痛みが無く、治療を受けやすくなると思います。保険適応になることが待たれます。

5月

市立病院 総合内科 白籏久美子 医師

「かかりつけ医受診のすすめ」

あれ?なんだか変だな、という時、皆さんどうしていらっしゃいますか?病院にかかるか、様子をみるか悩むことが多いと思います。
まずはいつからどんな症状がでたのか、ふり返ってみたらいかがでしょうか?その症状が急に始まって、悪くなっているのであれば、医療機関を受診することをおすすめします。その症状が前々から時々あって、変化がなければ様子をみてよいかと思います。数日様子をみて、ご心配であれば受診いただきたいと思います。
医療機関を受診する場合には、まずかかりつけの先生を受診することをおすすめします。かかりつけの先生がいない方は、この機会に決めていただければ嬉しいです。今までの病気、生活歴、家族歴、どんな症状でかかることが多いのかなど、把握していただけるので、いざという時にもそれらの資料を基に適切な判断をしていただけます。受診する前に、いつからどんな症状があるのか、悪くなっていないか、心配なことは何かなど、整理してから受診すると、よりスムースに診察ができます。
かかりつけの先生が、精密検査が必要と判断されれば、総合病院あるいは専門病院を紹介して下さいます。病院でも、かかりつけの先生からの情報をもとに診察させていただけると、より適切により速やかに診断することができます。
症状が強く、自家用車で受診することが困難であれば、救急車を要請することをおすすめします。
普段から自分の体の変化に気をつかっていただき、悪化があれば、まずはかかりつけの先生を受診してみてください。頼りになりますよ。

6月

市立病院 がん性疼痛看護認定看護師 杉本啓子 医師

がん性疼痛看護認定看護師の役割について

がん性疼痛看護認定看護師とは、がんによって生じる痛みに対して、お薬を中心にその苦痛を軽減する事を、専門的に行う看護師です。がんによって生じる痛みは人それぞれ違いますので、その方の痛みや症状に合わせ、患者さんご本人やご家族と共に苦痛緩和の方法を考え提供していきます。
本来、痛みには脳へ危険を知らせる警告信号としての役割があります。脳へ痛みが伝わる部分は痛いときに感じる不快感や悲しみなど主に感情的な部分でもあるため、時に怒りとして表現されることもあります。そのため、相手を攻撃することや言葉の暴力を出してしまうといった患者さんもいます。また、がんによる痛みは慢性的に持続するため、このストレスが長引くことで日常生活の面では、気力や意欲がそがれるだけでなく食欲が落ちたり、眠れなくなるなど様々な悪い影響が出ます。このように、仕事や身の回りの世話等自立した生活ができなくなることもあります。その反面、痛みは周囲の人になかなかわかってもらえず、孤立感を深め人間らしい気持ちを損ないます。そういったことも、がんの痛みからくる感情の変化と受け止め、適切な薬剤を選択する事で症状の緩和につながることもあります。
昔は、痛みを我慢することが美徳とされ、痛み止めを常用するのは良くないとされてきました。しかし、強い痛みがあることで、必要な検査や治療が受けられなくなることもあります。痛みは早いうちに治療を開始すれば、十分に緩和されるものです。
痛みやつらさは患者さんの普段の生活に直結し、「普通にしていたこと」ができなくなったりします。その生活への影響をできるだけ少なくしていけるようなお手伝いをしたいと思います。気軽にご相談下さい。

7月

市立病院 循環器内科 片桐 有一 医師

「ワーファリン」という薬について

「今、薬を飲んでいますが、納豆は食べていいのですか?」とよく聞かれます。
「○○リン」という薬品名が多いので紛らわしいのですが「ワーファリン(ワルファリン)」という薬以外でしたら問題はありません。
ワーファリンを必要とする病気の代表が心房細動(しんぼうさいどう)という不整脈です。心房細動は加齢に関係した不整脈であり、高齢化とともに増えています。心房細動では、心房内で血液がよどんで固まりを作り、この固まりがはがれて飛んで、脳血管をつまらせると脳梗塞になります。心房細動の患者さん100人のうち、年間4~5人が脳梗塞になると言われていますが、ワーファリンの服用により、年間1人にまで減らせることができます。しかし、出血が止まりにくいという副作用もあります。
ワーファリンの効き目は、ビタミンKという栄養素を抑えることで発揮されますが、ビタミンKの多い食品を食べると効果が薄れるという注意点があります。緑色野菜は、ビタミンKを多く含んでいますが、通常食べる量では問題ありません。ビタミンK自体も必要な栄養素ですので、普通に食べてください。
通常食べる量で注意がいる食品が納豆です。原料の大豆とか「ねばねば」には関係なく、納豆菌が腸の中でビタミンKをたくさん作るので注意が必要です。
なお、納豆自体は血栓予防作用もある優れた食品です。
ワーファリンには、血栓を予防しながら出血も少ないという効き目の程度が決まっています。効果の値は常に変動するため、診察のたびに採血をして薬の適量を加減しなければなりません。決められた量を正しく守り、飲み忘れや飲みすぎのないようにすることが大切です。
最近、ワーファリンと同じ効能がありながら納豆を食べることが可能で、頻回の検査も必要ない便利な新薬が発売され、それぞれの患者さんに適した薬を選べる時代となりました。しかし新薬からワーファリンに戻った患者さんもいらっしゃり、40年もの歴史あるワーファリンの出番はなくなりそうもありません。
(2007年7月1日号掲載のものを 改編・再掲)

8月

市立病院 脳神経外科 市川陽三 医師

脳血管内治療とは

脳血管内治療とは、脳の病気に対して、皮膚を切ったり頭蓋骨を割ったりすることなく、血管の中からアプローチする新しい手術法です。もともと脳血管撮影という、脳の血管をカテーテルと造影剤を使って撮影する検査から発展した手術法です。全身の血管は大動脈を介してすべて繋がっているため、足の付け根や肘の内側の血管など、体の表面近くを通る太い血管からカテーテルを挿入し、大動脈を通じて脳の血管まで進める事が出来ます。手術の際は検査用のカテーテルの中に、さらに細いカテーテルを入れ、病気のある部位(首や頭の中の血管)まで進めていき、様々な道具や薬品を用いて病気を治療します。
手術法は、通常最初に足の付け根か、肘の内側の動脈にシースと言われる短いチューブを入れ、その中を通してガイドカテーテルと呼ばれる直径3ミリ程度のチューブを首の動脈まで誘導します。さらにガイドカテーテルの中にマイクロカテーテルと言われる1ミリ強の非常に細いチューブを通して脳の病変部に到達させ、金属コイル等を挿入して病変部を閉塞させます。血管を拡張させる場合は、マイクロカテーテルの代わりに、拡張用の風船の付いたカテーテルや、ステントと言われる金属製の筒を病変に通して血管を拡げます。
この治療法の利点は、一般的な開頭術による外科手術に比べ、患者さんに加わる侵襲が極端に少ないこと、開頭手術での治療が困難な脳の中心部分でも、周辺の脳への影響を与えずに到達が可能であること、総じて入院期間が短いことなどです。また全身麻酔で行われることも多いですが、局所麻酔でも可能であり、麻酔をかける事が危険な高齢者や、心臓や肺の悪い人などには非常に有用な方法です。
脳血管内治療は、この4より、飯田市立病院脳神経外科にて治療を開始しております。

9月

市立病院 外科 堀米直人 医師

肝臓癌の治療

肝臓(肝)癌は早く見つけて早く適切な治療を行うことによって克服できる癌の1つです。肝癌発症のメカニズムや特徴は他稿に譲り、今回はもっぱら治療について述べます。現在推奨される肝癌治療(日本肝臓学会編ガイドライン)の柱は大きく分けて5つです。 まず1番目は手術です。癌病巣を切除するので完璧な治療ですが、大きく切除するため侵襲は過大です。十分手術に耐え、さらに残された肝臓がその後の患者さんの生活を維持する余力を持っていることが必要で、何回も実施できる治療ではありません。
2番目は肝動脈塞栓療法(肝動注化学療法)です。多くの肝癌病巣では動脈血流が多いという特徴を利用して、動脈から抗癌剤を癌病巣に投与したり、逆に動脈血流を遮断して壊死(死滅)させます。1回の治療では不十分な場合もありますが、反復実施できるので治療効果が得られます。
3番目はエタノールを注入したり、特殊な発熱媒体(マイクロ波やラジオ波)を用いた焼灼療法の局所療法です。通常皮膚から病巣を狙って針(電極)を刺して治療を行うので体への負担は軽く反復治療が行えますが、小さい範囲の治療しかできません。
4番目は分子標的薬を内服する全身化学療法です。有効な症例も見られます。現在まだ1薬剤しか認可されていませんが、第2第3の薬剤発売も間近で選択肢は増えるでしょう。
そして5番目に肝臓移植があります。条件を満たす症例の場合選択は可能です。通常はどんな肝癌にも複数の治療方法が存在します。1つの方法だけに偏らず5つの方法を組み合わせ、しかも反復治療して肝癌を克服しましょう。

10月

市立病院 産婦人科 鈴木昭久 医師

謎の婦人病 ― 子宮内膜症

婦人科で現在でも謎の病気が、子宮内膜症です。
子宮内膜症は子宮内膜(子宮の粘膜)がなぜか卵巣など他の臓器に見つかる病気で、月経の度に症状を起こします。多くは骨盤内に発生し、月経痛、排便痛、性交痛、不妊の原因になります。卵巣では嚢腫を形成(内膜症性嚢胞)し、内容液がチョコレートペースト状で「チョコレート嚢腫」と呼ばれる事があります。稀に腸に発生して腸閉塞や下血の原因になる事や、肺の表面に発生して気胸や胸痛を繰り返す方もいます。
なぜ子宮内膜が他の臓器にできるのかは現在でもよくわかっていません。臨床像や動物実験から月経時に月経血がお腹の中にこぼれて発生するという説が最も有力です。しかし、月経血の逆流は多くの女性で起こっていますので、何らかの体質が関係することが考えられています。
子宮内膜症は主に月経時に症状が出現しますので、閉経すると概ね症状が消失します。チョコレート嚢腫をお持ちの方も閉経後に通院を中断する方がみえますが、ここで注意が必要です。最近の国内の研究でチョコレート嚢腫から約0.7%程度の頻度で卵巣がんが発生することがわかり、長期経過観察中の方は油断できません。
治療は手術療法の他、ホルモン療法などの薬物療法があります。ホルモン療法に関しては、数年前までは閉経後と同様のホルモン状態にする偽閉経療法が中心でした。その後、保険適応のある低用量ピル、長期間服用可能な黄体ホルモン製剤が新たに開発され、現在ではホルモン療法の選択肢が広がっていますので、かかりつけの産婦人科医にご相談ください。

11月

市立病院 副院長 羽生憲直 医師

認知症の方を地域の皆で支えていきましょう

物忘れやその人らしからぬ振る舞いに気付いて認知症と診断されるご高齢の方が増えています。もし家族の中にそんな心配のある方がおられたら、まずは、ご近所の診療所の先生に相談ください。その先生がかかりつけ医であれば最適です。飯田下伊那地域の医療機関では、医師会を中心に認知症の方を皆で協力して診ていく体制を目指していますが、その中心になるのは診療所のかかりつけ医です。家族の方も一緒に診察室に伺って、最近変わってきて気になることなどをお話しください。大まかに認知症の可能性があるかどうか診断していただけます。かかりつけ医の判断で認知症の可能性がある場合には、病状が改善するようにお薬による治療が始まります。認知症だけでなく、他の病気やその人の生活背景を踏まえた上で適切な治療が受けられるのも、かかりつけ医の良さです。
認知症の診断が難しい場合は病院の専門医に紹介されます。この地域では飯田病院、健和会病院、瀬口脳神経外科病院、飯田市立病院の4病院が専門的な診察と検査を担当致します。何れの病院を受診してもほぼ同じ診察や検査を受けられる体制になっています。かかりつけ医とよく相談して病院を決めてください。検査が終了して診断や治療方針が決まると、その結果をもとに引き続きかかりつけ医に治療していただきます。
認知症はお付き合いが長く、短期間の入院や集中的な治療でよくなる病気ではありません。むしろ入院や施設入所で環境が替わることで、病状が悪くなることもしばしばです。住み慣れた環境の中で今までどおりその人らしく療養を続けることが大切です。若い頃から慣れ親しんだご近所の方とのふれあいも大きな支えになるでしょう。医療の面ではかかりつけ医を中心に病院も協力して、また生活の面ではご近所の皆さんにもご協力いただいて、認知症の方々が療養しやすい地域づくりができればと考えています。

12月

市立病院 総合内科 下平雅規 医師

その高血圧、ホルモンが原因かも

日本人の4000万人、およそ3人に1人が高血圧だと言われています。そのうちの9割は本態性高血圧という原因がはっきりしない高血圧ですが、1割は検査をすれば原因が分かる高血圧です。なかでも最も多いのは、高血圧の約7%を占める原発性アルドステロン症という病気です。
アルドステロンは副腎(腎臓の上にある小さな臓器)から分泌されるホルモンで、血圧を上げる作用があります。原発性アルドステロン症は、このホルモンを過剰に作ってしまう良性の腫瘍が副腎にできることで高血圧になります。アルドステロンは動脈硬化を起こすため、本態性高血圧に比べると脳卒中や心筋梗塞、心不全、腎不全などが起きやすくなります。
検査は、血液中のアルドステロンの値を調べることから始まります。このホルモンは姿勢によって値が変化するため、仰向けで安静になった状態で採血をします。腫瘍の検索にはCTやMRIが有用で、その他に副腎シンチグラフィーという画像検査や副腎静脈血サンプリングというカテーテル検査が行われます。腫瘍がある副腎を手術で摘出することで、血圧が改善して、降圧剤を全く服用しなくても良くなることもあります。手術を希望されない場合は、アルドステロンの働きを抑える作用がある降圧剤を内服します。
原発性アルドステロン症の多くは、血圧が高いという以外に特徴的な症状がないために、なかには本態性高血圧として治療されてしまっている場合があります。初めて高血圧と診断された方だけでなく、治療中の方も、ぜひ一度、ホルモンの検査を受けることをお勧めします。